(2025/6/30 公開)
TBSラジオ、安住紳一郎さんの日曜天国というラジオ番組、面白い。安住さんのユーモアやワードチョイスが魅力的で、私もこんな風にお話しできたら素敵なのになあと思います。毎週日曜朝10:00~11:55の放送ということで、面白いと言っておきながらも、私はこの時間はしばしばラーメンを食べに行っておりますのでなかなか聞くことはできず。リアルタイム視聴でなくごめんなさい。TBS PodcastをAmazon Musicで聞いています(30分しか聞くことができないのですが)。
さて、6月15日に「にちてん ミニマムロト3」が開催され、6名の方に高級さくらんぼが当たったそうです。応募してみよ、と思っていたのに、すっかり忘れていました。000~999の3桁の数字を選んで送るというもので、応募総数は28,792(!)、当選番号は「740」だったそうです。1000通りの数字から自由に選び、さくらんぼよ当たってくれと願いを託すわけですが、何人がこの数字を選んだのか、集計結果を公表してくれています(リンク)。これを眺めていると、安住さんも番組内でおっしゃっていましたが、人々がどう選んでいるのか、興味深いことが観察できます…!
以降にグラフをいくつか作成して、分析してみます。このようなことができるのは、約29,000にもおよぶ膨大なサンプルを集めるラジオ番組と、集計結果を公表してくれるTBSラジオの心意気のおかげです。敬意と謝意を表します。
グラフにして観察してみよう
まずは、000~999の1000とおりの数字に対し、それぞれ何人が選んだのかということを、グラフにしてみました。縦軸が選んだ人数、横軸が000~999の数字です。興味深いことに、よく選ばれる数字と、そうではない数字というのが、周期的に現れることが観察されます。だいだい周期が100くらいで、ピークは下二けた10~20番代にありそう、ということが見えてきます。

000~999の各数字を選んだ人の数。さくらんぼカラーにしました🍒
下二けたの数字が特徴的だとわかったので、今度は下二けたの数字で選んだ人の数を集計してみます。たとえば、下二けた「15」だったら、015、115、215、…、915を選んだ人数を集計して、平均にしてみました。それが次のグラフです。どうやら0~31までと、32~99では人数に明らかな差異がありそうですね。さらに見てみると、10~31がより多く選ばれている様子も観察されます。

下二けたの数字に注目して、選んだ人数を平均化してみた🍒
続いては百の位の数字に注目を。グラフで「300」となっているところの人数は、300~399を選んだ人数を平均したもです。この図を眺めていると、300番代が多く、0番代(百の位がゼロ)が少ないことが特徴的です。ほかの数字はさほど差はなく、これらだけ大小がある。なぜなんでしょうか…。

百の位の数字に注目して、選んだ人数を平均化してみた🍒
さて、最後に、選んだ人数の累積分布を示してみます。1000通りの数字を、選んだ人数が多い順に1位~最下位まで並び替えて、各数字を選んだ人数の割合を累積して計算したものです。見事な曲線になっています。

累積分布曲線🍒 (多い順に並び替え)
ランダムに数字を選んでいるのだとすれば
ここまでの整理で、1000とおりの数字を選ぶとき、人間が選ぶ数字には偏りがでてくるようだとわかりました。そこで比較のために、機械にも同様に数字を選んでみてもらいましょう。Excelで、RANDBETWEEN関数を使用し、0~999の数字を28,792回発生させてみました。これを数字ごとに選ばれた数を集計してみると、下のグラフになります。先ほどとは打って変わって規則性がないですね。この結果と対比してみると、いかに人間が選ぶ数字に偏りがあるのかということがわかってきます。

Excel君に0~999を28,792回選ばせてみた結果💻
これを先ほどと同様に、累積分布に直してみてみます。先ほどは美しい曲線を描いていましたが、こちらは対照的に、直線に近い形状です。

累積分布曲線💻 (多い順に並び替え)
どんな数字を選ぶのか/避けるのか
3桁の数字で、選ばれた上位10位までの数字は以下のとおり。
1位 615(161人)0.560%
2位 358(154人)0.535%
3位 315(133人)0.462%
3位 326(133人)0.462%
5位 954(130人)0.452%
6位 125(113人)0.393%
7位 612(109人)0.379%
8位 310(108人)0.375%
8位 623(108人)0.375%
10位 327(107人)0.372%
10位 369(107人)0.372%
1位の615は、ロト開催日の6/15から、5位の954はTBSラジオの周波数からですね。2位の358は、番組内でも言及されていましたが、エンジェルナンバーというらしいですね。車のナンバープレートでも人気なんだとか(知りませんでした)。上位にランクインしているほかの数字にも、やはりそのような幸運なナンバーという意味付けがあったりするのでしょうか。
ところで下二けたの数字に着目すると、10~31の間が多いという傾向が明らかでしたが、これはやはり日付との対応なんでしょうね。数字を自由に選んで、と言われれば、なにか自分に縁のある数字…多くは誕生日などを思い浮かべるでしょう。その結果の現れと解釈してよいでしょうか。

下二けたの数字の集計。下一けたが「0」を黒、下二けたがゾロ目を水色で塗ってみた
その一方で興味深いのは、選ばれない数字です。番組内でも言及されていましたが、「キリ番」すなわち一の位がゼロの数字をグラフで黒色に塗って示してみると、明らかに選ばれていないことがわかります。特に40~90が顕著(10は例外)ですね。
さらに、「ゾロ目」にも着目してみると(水色塗り)、これもまた選ばれていない傾向があるでしょう。当選確率はどの数字も等しいはずですが、なんとなくランダム感がなくて避けてしまうんですかね。
さらに、また3桁の数字に焦点を戻し、不人気だったナンバーを示してみましょう。
1000位 944(0人)0.000%
998位 677(1人)0.003%
998位 880(1人)0.003%
おもしろいことに、28,792もの人の、誰からも選ばれなかった数字というものが存在しています。「944」の関係者のみなさま、元気だしてほしいです。これは日本の「忌み数」とされる9と4の組み合わせであること、さらにゾロ目であることが理由なのかなと推察します。実は下二けた「44」は、544、644、844もワースト10位タイ以内にランクインしています。「4」を避ける気持ちが、無意識のうちに発露しているのでしょうか。さらに、990番代の数字も多く、991、993、994、996がワースト10位タイ以内にランクインしているのも興味深い点です。その一方で999は30人に選ばれており、全体の328位タイにランクインしています。
PINコードの設定と、ロト3での選択における思いの違い
人はどんな数字を選んでいるのか、昔にこんなものをどこかで見た記憶があるなあと思い返してみると、これでした。クレジットカードのPINコード(4けた)でよく使われているものの分析です。ここでの結果では、0000~9999の10,000とおりの組み合わせがあるのにもかかわらず、「1234」という数字が実に全体の10.7%も占めており、次いで「1111」が6.0%、「0000」が1.9%と、これらだけですでに20%近くを占めています。さらに、20位までにランクインしている数字をみると、「2222」「3333」「4444」といったゾロ目の数字が目立ちます。如何にPINコードの設定に無頓着であるのか、そんなことが窺いしれる結果で、非常に興味深い。
その一方で、さくらんぼを懸けて応募した3桁の数字では、そんな単純な数字の組み合わせはむしろ避けられていることが明らかでした。ゾロ目やキリ番を避け、縁起のいい数字に願いを込める、そんな人々の営みが垣間見えます。
数字を選ぶ、という観点ではPINもロトも同じですが、こんなにも違いが現れることを興味深く思いつつ、さくらんぼへの願いと同じくらいにPINコードも真剣に検討した方がいいのでは、そんな余計なお世話を思案したりするのでした。
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思いがけず、面白い結果が見えてきました。統計や心理の勉強になりますね。詳しい人にもっと説明してもらいたいなと思いました。
このような面白いデータセットをご提供いただきました、「TBSラジオ 安住紳一郎の日曜天国」スタッフのみなさまに、重ねて御礼申し上げます。ありがとうございました。
私も高級さくらんぼ食べたい。
参考サイト
・安住紳一郎の日曜天国 にち10ミニマムロト3 結果発表!

・DataGenetics – PIN analysis
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